2020年5月11日月曜日

蟹缶を自分のために開けてゐる海がこぼれぬやうにそおつと   門脇篤史 

 毎日新聞の「歌壇・俳壇」の川野里子さんのエッセイで紹介されていた一首。
 蟹缶を一人で食べるのであろう。缶の汁を「海」と詠んだところが手柄だが、蟹缶を宝物のように大切にあつかう様子に思わず微笑んでしまう。
 そういえば、蟹缶を買ったことがない。確かに高いんだろうけど、どのくらいのものなのかと検索してみると、「タラバ蟹缶(脚肉)120g」なるもので、一缶価格3240円というのがヒットした。なるほど、これは宝物ですね。
 商品紹介として「缶詰ならではのつけ汁も、スープなどに利用できて便利」なる売り文句もあったが、この歌ではきっとつつっと啜るんでしょうね。海と一体になるひとときか。

蟹缶を自分のために開けてゐる海がこぼれぬやうにそおつと
門脇篤史/『歌集 微風域』(現代短歌社)

2020年5月10日日曜日

日射しにはもう瑞々しい初夏の匂いがした   村上春樹

 日射しに匂いなどあるわけがないのに、この季節をきちんと表す端正な文章に続くと、なるほどそうかもと頷いてしまったりする。
 この美しい季節との出会いの後、主人公は、どこかへ向かう彼女に付いて延々と歩くことになる。四ツ谷、市ヶ谷、飯田橋、神保町、お茶ノ水、本郷、そして駒込へと。
 四ツ谷から飯田橋へ続く堀沿いの土手は、確か外壕公園と呼ばれる遊歩道で、桜の名所だったはず。昔々、何度か花見をしたことがあったが、葉桜の頃に訪ねたことはない。きっと木漏れ日が美しいだろう。

 僕と彼女は四ツ谷駅で電車を降りて、線路わきの土手を市ヶ谷の方向に歩いていた。五月の日曜日の午後だった。朝方降った雨も昼にはあがり、低くたれこめていた鬱陶しい灰色の雲は、南からの風に追われるようにどこかへ消えていた。くっきりとした緑の桜の葉が風に揺れて光っていた。日射しにはもう瑞々しい初夏の匂いがあった。

村上春樹/「螢」〜『螢・納屋を焼く・その他の短編』(新潮文庫)

ジャガーは病気もしないし、年齢もなく、亡くなることもないので心配しないでほしい。 JAGUAR所属事務所担当者

  「令和3年、JAGUAR星人のJAGUARが、大好きな地球よりJAGUAR星に帰還いたしました」との所属事務所の発表を受けての千葉日報の取材に対する担当者のコメント。これでジャガーさんは永遠の存在となった。すごい。 千葉日報の記事は こちら