2019年5月13日月曜日

若葉風ひとゆれで発つ小海線  土生重次

 やわらかな風が、瑞々しい夏木の新葉を揺らしていく。そんな親密なふれあいのように、起動した電車はカクンと一揺れし、新緑の高原へとゆっくりと動きだしたのだ。
 小海線は、小淵沢から小諸を結ぶ単線。遠い昔、小淵沢から甲斐大泉まで乗ったことがある。八ヶ岳のふもとに住む人を仕事の打ち合わせで訪ねたときのことだが、コトコトと山を登っていく電車が愛らしく思えた。
 仕事が始まってからは、あちこち移動することから車を使うことになり、小海線はそれきりとなってしまったし、その仕事相手も若くして亡くなってしまったので、八ヶ岳もすっかり遠い地となってしまった。
 それでも、仕事相手の人懐こそうな笑顔と、風に揺れる森のささやきをボクは覚えている。

若葉風ひとゆれで発つ小海線
土生重次/『俳句歳時記 第四版増補 夏』(角川ソフィア文庫)

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ジャガーは病気もしないし、年齢もなく、亡くなることもないので心配しないでほしい。 JAGUAR所属事務所担当者

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