2019年5月14日火曜日

初なすび水の中より跳ね上がる  長谷川 櫂

 もぎたての茄子はつややかに張りがあって、洗うべく水桶に沈めても、中につまった空気がまさっているのか、スポンと飛び跳ねる。なにがあの張りをつくるか知らないが、包丁を入れて、焼いたり煮たりと熱を加えたりすると、くたくたになってしまうから、多分に空気かなにか形のないものなのだろう。そのなにかが抜けたあとが吸収性に優れているらしく、煮びたしにするとぐいぐい旨味を吸い込んでくれる。

 そんな、おいしいおいしい茄子の煮びたしの上に大根おろしと鰹節をこんもり乗せた、福田屋の冷やし茄子蕎麦が始まると、ああ夏が来たんだなあと思ったりするのよね。


 この茄子をちびちびつまんで日本酒二合はいただけそうだけど、本日の目的は蕎麦なので、がしっとつまんでじゅるんと頬張る。口中に煮汁が広がる快楽を感じながら、矢継ぎ早に細く冷たいそばを手繰ると、舌から喉へとよきものが進んでいくのが分かる。

 まだ、昼過ぎだけど、今日はいい一日だった。以上。

初なすび水の中より跳ね上がる
長谷川 櫂/『俳句発想法歳時記 夏』(草思社文庫)

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